日レ医誌(JJSLSM) 第22巻第3号

後鼻孔閉鎖症手術におけるホルミウムYAGレーザーの使用経験

金沢医科大学耳鼻咽喉科
○松野栄雄、村田英之、友田幸一
 

先天性後鼻孔閉鎖症は約8,000から10,000の出生に1例発生すると報告されており、稀な疾患である。後鼻
孔閉症には骨性閉鎖と膜性閉鎖があるが、一般に骨性閉鎖が多い。両側性の閉鎖では、呼吸に対する早急
な対処が必要である。
 Crouzon病は、頭蓋縫合早期癒合症、上顎骨低形成、浅い眼窩と眼球突出を主症状とする稀な疾患であ
る。今回我々は先天性後鼻孔閉鎖症を合併したCrouzon病の1例を治療する経験を得たので若干の文献的
考察を加え、報告する。
症例は生後7ヶ月の女児。在胎39週5日、頭位自然分娩にて出生。出生体重3342g。奇異な顔貌と出生時か
らの呼吸困難、哺乳障害があり、当院小児科に入院した。経鼻的な胃管が入らないため、後鼻孔閉鎖が疑わ
れ当科へ紹介となった。
患児は生後7ヶ月の女児で、鼻孔が狭く、ドリル、鉗子類が入りづらく、骨蒸散にも有用なホルミウムYAGレー
ザーを使用することにより経鼻法でも十分な視野を確保できた。また、手術侵襲も少なく、新生児期でも施行
可能で、自験例のような、呼吸困難、哺乳障害を伴い、早期の手術が望ましい例では、レーザーが有効と思
われた。また、後鼻孔閉鎖開放術に際し、ナビゲーションシステムを用いることにより、方向、深さ、位置の確
認が容易となった。使用したEvnasナビゲーションシステム(機械式アーム型)はアーム基点からプローブ先端
の距離と、アーム関節の角度情報からプローブ先端の位置を計算しモニター画面上で、位置確認できるシス
テムである。
今回我々は、生下時より呼吸困難を認めた先天性後鼻孔閉鎖症に対して内視鏡下で経鼻法によるレーザー
開放手術を行った。ホルミウムYAGレーザーは出血を少なくし、よい視野を得られ、特に骨性閉鎖のある孔の
拡大に有効であった。正常解剖と異なる手術をするのは容易ではなく、ナビゲーションシステムを用いることに
より、方向、深さ、位置の確認が容易となった。