日レ医誌(JJSLSM) 第22巻第3号

ホルミウムYAGレーザーによる涙嚢鼻腔吻合術の経験

1)金沢医科大学眼科、2)金沢医科大学耳鼻咽喉科
○芹原清志1)、中泉裕子1)、高橋信夫1)、村田英之2)
 

1.はじめに
ホルミウムYAGレーザー(Ho:YAGレーザー)は、骨組織などの蒸散、凝固止血作用を併せ持つレーザーとし
て、整形外科、耳鼻咽喉科、泌尿器科などの領域で使用されている。従来涙嚢鼻腔吻合術 (DCR)は皮膚切
開にて涙嚢を露出し、鼻腔と吻合していたが、近年では、鼻腔内よりアプローチする鼻内法が普及し始めてい
る。今回、DCR鼻内法に対して、Ho:YAGレーザーを用いて骨窓の作成を行った症例を経験したので報告す
る。
2.手術方法
DCR鼻内法においては、鼻腔内から涙嚢に向けて吻合口の作成が必要となるが、鼻腔の構造上作業スペー
スが限定され、ドリルや骨ノミを用いた骨窓の作成が困難であった。骨窓の大きさ、角度の調整は、従来の方
法では難しかった。そこで今回、骨の切除(蒸散)にHo:YAGレーザーを用いて手術を行った。まず、ナビゲーシ
ョンシステム、光ファイバーイルミネーションを用いて、鼻腔内より、涙嚢の位置を同定した。涙嚢内側にあたる
鼻粘膜を、鼻腔内よりメスにて切開し、剥離子にて骨膜を剥離、骨を露出した。次に、Ho:YAGレーザーにて骨
組織を蒸散、吻合口を作成した。出力装置には、コヒレント社製Ho:YAG レーザーVersa puluse select を用
い、出力は1.0J、8パルス/秒の設定にて使用した。露出した涙嚢壁をメスにて切開し、涙嚢と交通した。切開
部にN-Sチューブを挿入、シリコンチューブにて固定し、手術終了とした。
3.結果および考察
組織の切除と止血が同一のプローブを用いて可能なため、容易に吻合口を作成することができた。しかし、組
織の蒸散によって多量の煙が発生し、極端に視認性が低下したこと、熱が発生すること、組織の識別が困難
になることが今後の検討課題になると思われた。