日レ医誌(JJSLSM) 第22巻第3号

ホルミウム・ヤグレーザーを用いた経尿道的尿管砕石術の治療経験

北里大学医学部泌尿器科
○藤田 哲夫、岩村正嗣、宋 成浩、丸 典夫、志村 哲、入江 啓、馬場志郎
 

1.はじめに
 ホルミウム・ヤグ(Ho:YAG)レーザーは、内視鏡下治療において硬・軟両組織に有効なレーザーであり、近
年、経尿道的尿管砕石術(TUL)における有効性が報告されている。今回我々は、Ho:YAG レーザーを用いた
TULの治療効果につき検討した。
2.対象と方法
 1999年3月より2001年7月の間に、当院にてHo:YAGレーザーを用いてTULを施行した13症例、 14尿道結石
を対象とした。性別は男性7例、女性6例で、年齢は41〜70歳(中央値53歳、平均値54.9歳) であった。結石部
位は右側5例、左側9例で、上部尿管(U1)7例、中部尿管(U2)3例、下部尿管(U3)4例であった。結石の大きさ
は、4mm以下が1例、4〜10mmが6例、10mm以上が7例であった。
 TULの内視鏡には、8.0Fr硬性尿管鏡または6.9Fr細径硬性尿管を使用し、レーザー発生装置は日本赤外線
工業株式会社製のHo:YAGレーザーIH-102を用いた。レーザーファイバーは0.8mmまたは 1mmを使用し、レー
ザー照射条件は5〜8Wで施行した。手術時間は45〜130分(平均70.7分)であり、13例に術後ダブルピッグテ
イル尿管ステントを留置した。
 治療効果判定には術直後の腹部単純X線を用い、残石なしと4mm以下の残石を有効とし、残石5mm 以上と
push-up例は無効とした。
3.結果
 残石なしは5例(35.7%)、4mm以下の残石は3例(21.4%)であり、全体の有効率は57.1%であった。
結石部位U2以下での有効率は71.4%、結石の大きさ10mm以下での有効率は100%であった。なお、U2 以下
かつ10mm以下での有効率も100%であった。 尿管穿孔等の合併症は、1例も認めなかった。
4.考察
TULは超音波砕石装置、電気水圧砕石装置、リソクラスト、レーザー等の結石破砕装置を用いて施行される。
これらのうち、Ho:YAGレーザーは波長2100nmで、潅流液を使用する内視鏡下治療において安全かつ有効に
使用できるエネルギーソースである。組織に対して蒸散、切開、凝固作用を有し、硬・軟両組織の両者に使用
できる汎用レーザーとして広く用いられている。組織への吸収深度は 0.4nmとごく浅いため、周辺組織に対す
る熱侵襲が少なく、また破砕力は強く結石破砕片がごく微細となる特徴を有する。
 今回の我々の検討では、全体の有効率は57.1%とやや低い結果となったが、これは上部尿管における 
10mm以上の結石の破砕効果が不良であったためと考えられた。従来のレーザーと比較して、 push-upの頻
度が低いと報告されてはいるが、対象結石によっては容易にpush-upされてしまう例もみられた。一方、中部
尿管以下かつ10mm以下の結石においては非常に有効率が高く、尿管穿孔等の合併症率も低いため、下部
尿路の小結石に対しては第一選択とすべき治療法と考えられた