日レ医誌(JJSLSM)第19巻第1号(1998)

特集/前立腺肥大症治療とレーザー 

前立腺肥大症に対するHo : YAGレーザーを用いた治療

棚橋善克、豊田精一、喜屋武淳、坂井清英、
太田章三、小玉哲也*、高山和喜*


東北公済病院泌尿器科
〒980-0803 宮城県仙台市青葉区国分町2-3-11
TEL 022-227-2211 FAX 022-715-8254
*東北大学流体科学研究所 


--------------------------------------------------------------------------------

Transurethral Prostatectomy using Underwater Shockwave 
induced by Ho : YAG Laser Irradition
Yoshikatsu TANAHASHI, Seiichi TOYOTA, Atsushi KYAN, 
Kiyohide SAKAI, Shozo OTA, Tetsuya KODAMA* 
and Kazuyoshi TAKAYAMA*

Division of Urology, Tohoku Kohsai Hospital
*Fluid Research Institute Tohoku University
 
要旨
 私たちは、Ho : YAGレーザーを用いた前立腺肥大症の内視鏡的手術を行っている。この方法は、Ho : YAG
レーザー照射により発生される水中衝撃波を利用して、ナイフのように前立腺腺腫の切除を行う。高周波電流
を用いる前立腺電気切除術に比べた大きな利点は、出血が少なく、低Na血症の合併がないことであり、Nd : 
YAGレーザーを用いた前立腺焼灼手術に比べた大きな利点は、術直後から良好な排尿状態が得られること
である。


キーワード: 前立腺肥大症、内視鏡手術、Ho : YAGレーザー、水中衝撃波

Abstract
Transurethral prostatectomy is performed using Ho : YAG laser in this study. Prostatic tissue is cut by 
underwater shockwave induced by Ho : YAG laser irradiation. The advantage of this method compared 
with transurethral prostatectomy using high frequency electrical current is that bleeding is little and 
there is no possibility of having hyponatremia. Another advantage of this method compared with 
transurethral prostatectomy using Nd : YAG laser is that the force of urinary stream greatly improves 
just after the operation.

Keywords : prostatic hyperplasia, endoscopic surgery, Ho : YAG laser, underwater shockwave

 
はじめに
前立腺肥大症とは、前立腺の尿道周囲腺が加齢とともに腫大し尿道を圧迫するため、排尿障害を引き起こす
にいたった病態をいう。前立腺肥大症の手術療法としては、これまで高周波電流を用いた切除術が主流であ
ったが、術後の低Na血症などの合併症が問題となっていた。
 最近では、このような合併症を引き起こすことのないレーザー照射による前立腺手術の試みが始まってい
る。しかし、一般に用いられている連続波Nd : YAGレーザーは、組織(水中)での減衰が少なく組織の深部ま
でエネルギーが及ぶにもかかわらず、深達度の判定が難しく、被膜穿孔などの危険がある。また、術後、照射
された組織の腫張により尿道の閉塞状態が生じ、一過性の尿閉状態を来たすことも問題点として指摘されて
いた。
 私たちは、連続波Nd : YAGレーザーに伴う問題点を解決する目的で、パルス波Ho : YAGレーザーを応用す
ることを試みた。また、超音波パワードプラ法(カラードプラエナジー法)を術前に施行して、前立腺内の血流を
予め把握し、腺腫内の太い動脈を確実に閉塞させ効率をたかめること、尿道周囲の静脈を焼灼し出血を少なく
することを試みている。 

1. Nd : YAGレーザーとHo : YAGレーザーの違い
1. 連続波Nd : YAGレーザー
 波長が1.06μmと比較的短いため、組織(水中)での減
衰が少なく、組織中深くエネルギーが及ぶ(図1)。したが
って、レーザー照射の効果(組織の変性)は大きいが、被
膜穿孔などの危険があった。また、術後、照射部位の腺
腫の腫張により、一過性の尿閉状態を来たすことも問題
点として指摘されている。

2. パルス波Ho : YAGレーザー
 パルス波であるため、レーザーが照射され変性を受け
た組織が、直ちに蒸散あるいは衝撃波の発生により切除
されてしまうため、変性部の確認が容易であるという特
徴がある。一方、波長が2.06μmと石英ファイバーで伝達
できる最大の波長であるため、組織(水中)での減衰が
大きく、組織への深達深度は低い(図1)。その一方、被
膜穿孔などの危険は少ない。また、照射とともに組織が
除去されることから、術直後より排尿状態の大幅な改善
が期待される。 
図1

 
2. Ho : YAGレーザーによる衝撃波発生の解明
 水中での、Ho : YAGレーザーの照射により、組織は瞬
間的に白色変性を来たし断裂する。これは、水中衝撃波
が発生しているためと考え、この現象の解明を試みた。
 実験は、Ho : YAGレーザー発生装置として、NHC社製
のMedical Laser System IH102型を用い、ファイバー先
端出力は20W、水温21.1〜22.8℃の条件下で行った。

1. 水中衝撃波の発生
  Imotek Messtechnik社製のPVDF needle hydrophone
を用いて、衝撃波波形の検出を試みた。ファイバーの正
面では、圧力センサーの破壊が起きる可能性が大きい
ので、レーザービームの方向より少しオフセットした位置
で、かつファイバー先端より数mm離れた位置で測定し
た。
 測定結果は、急峻な立ち上がりを持つスパイク波(衝
撃波)で、peak pressureは、ファイバーの軸方向に対し
45°で、ファイバー先端より3mm離れた位置で0.5MPa、
5mm離れた位置で0.4MPa出会った(図2a)。

2. 水中衝撃波の可視化
 レーザー・ホログラフィー干渉計法を用いて、水中衝撃
波の可視化を試みた。水中でHo : YAGレーザーを照射
すると、ファイバー前方に衝撃波フロントが形成され(図
2b)それにひきつづいて微小気泡が多数形成・崩壊し、
キャビテーションが起こる様子が観察された(図2c)。
 以上のことから、Ho : YAGレーザー照射による組織切
除のメカニズムは、衝撃波により発生した微小気泡の崩
壊の際に起きる、キャビテーションによるものと推察され
た。
  
図2 

3. 側射ファイバーの開発
 上記のファイバーの導光系としては石英ファイバーが用
いられている。前立腺の手術においてはファイバーと直
交する方向にレーザービームを偏向させる必要があり、
Nd : YAGレーザーによる治療では側射ファイバーが用い
られている。しかし、Ho : YAGレーザーは、Nd : YAGレー
ザーに比べpeak power が大きいので、ミラーあるいはプ
リズムを用いたNd : YAGレーザーの側射ファイバーで
は、耐久性に問題がある。また、これらの側射ファイバー
では、レーザーの側射方向の同定が難しく、照射方向の
決定のために費やす時間が手術時間のかなりの部分を
占めていた。そこで、これらの欠点を補うため、耐久性が
高く、さらに照準のあわせやすい側射ファイバーを開発し
た。

1. 開発した側射ファイバーは、石英ファイバー先端部を
約45°にカットし、この部分を石英カプセルで覆い、この
カプセル内に窒素ガスを充填した構造とした。レーザー
光は、45°にカットされた端面で全反射して、約85°偏
光される(図3a)。なお、石英ファイバーのcore径は600
μm、被膜を含めた外径は1.4mmで、先端のカプセルの
外径は2.0mmである。

2. レーザーの照射方向はガイド光により確認できること
になってはいるが、実際の内視鏡鏡下の使用では、尿
道粘膜の状態(発赤、浮腫)によってはガイド光が見えに
くいことがしばしばあり、照射方向の確認のために多大
な時間を消費する。そこで、このファイバーには、先端に3
本の線状のマーカーを付け、照射方向の確認を容易とし
手術時間を短縮することをもくろんだ。レーザーの照射方
向とマーカーの色との関係は図3bのようになっている。
すなわち、内視鏡的に黄色のラインが見えたらレーザー
の照射方向は6時方向、赤色のラインが見えたら9時方
向、青色のラインが見えたら3時方向にレーザービーム
が出ていることになる。
  
図3

4. 超音波パワードプラ法による前立腺内の血流状態の検討
 前立腺内の血流の状態を観察する目的で、超音波ビームと直交した血流も捉えることのできるパワードプラ
法(カラードプラエナジー法)を施行して、前立腺内の血流を予め把握することに努めた。正常前立腺では、前
立腺内血流の検出率はさほど高くはない(図4a)が、肥大症では、腺腫(いわゆる内腺、transition zone)内
部あるいは尿道周囲の血流が著しく増加していた(図4b)。このうち、腺腫内の動脈の走行は、主として腺種
の前後方向に走行していることが多く、上下方向に走行していることは少なかった。また、尿道周囲の静脈
は、やはり前後に走行するが複雑なネットワークを形成している。ちなみに前立腺炎では、辺縁部(いわゆる
外腺、peripheral zone)での血流が増加している例が多かった(図4c)。
 

5. 臨床応用
1) 対象症例
 Ho : YAGレーザーによる治療は、20例に行った。年齢
は55〜89才(平均66.2±9.1才)、前立腺推定重量は19
〜86g(平均39.5±19.6g)であった。
 比較検討のため、Nd : YAGレーザーによる治療を行っ
た20例の年齢は、59〜88才(平均73.4±8.5才)、前立
腺推定重量は22〜103g(平均43.7±2g)であった。両
群の間には、年齢、推定重量に有意の差はない。

2) レーザーによる照射の実際
1. レーザー照射に用いるレンズは、視野方向が0〜5°
のものを用いた。これは、視野方向が浅いレンズの方
が、尿道全体を同時に観察できるのでレーザー照射に
は好都合だからである。

2. まず、尿道周囲の血管(静脈が主)に対し、切開では
なく、熱凝固による閉塞を起こさせた。すなわち、レーザ
ープローブを血管から少し離して、レーザーのスポット径
が大きくなるようにし、血管の周囲から照射(defocus照
射)していき、血管の熱変性による萎縮・閉塞を起こさ
せ、出血が起きにくいようにした。

3. ついで、腺腫内の血管の凝固をおこなった。腺種の
大きさ、およびパワードプラ法で得られた腺腫内の血管
の走行に応じて、2点(8時、10時)または3点(8時、9
時、10時)で、凝固の幅が広くなるよう微妙なローリング
を加えつつ、プローブを腺種に接触させながらレーザー
を照射し(図4a)、予めパワードプラ法で検知された腺腫
内の動脈を焼灼するようにした。

4. ついで、プローブを膀胱側から精阜側に引き抜きなが
ら深く切開を行った。この時、前立腺の底部(膀胱に近
い側)と尖部(精阜に近い方)は浅めに、中央部は深め
に切開した(図4b)。照射切開の深さは、プローブを引い
てくるスピードによってコントロールした。

5. 出血に対しては、出血点そのものを照射するよりも、
出血点の前後、上下で、レーザープローブを出血点から
少し離して、defocus照射すると容易に止血できた。

3) 臨床成績
1. 自覚症状の改善:
 自覚症状チェック項目をスコア化したIPSS(スコアの高
いほど症状が強い)は、Nd : YAGレーザー群で、術前
21.5±10.6、術後1週(3〜10日後)23.6±14.7、術後3
ヶ月5.2±2.2であった。Ho : YAGレーザー群では、術前
19.8±6.9、術後1週間8.2±5.8、術後3ヶ月6.2±1.8で
あった。いずれも術後3ヶ月では著明に改善していた。し
かし、術後1週(3〜10日後)では、Nd : YAGレーザー群
はやや悪化しているのに対し、Ho : YAGレーザー群で
は、最終成績に近い良好な値を示しており、両群で大き
く異なっていた。

2. 他覚所見の改善:
 尿流量検査(最大尿流率)の結果は、Nd : YAGレーザ
ー群では、術前9.6±4.8ml/secであったものが、術後1
週間(3〜10日後)で7.2±7.4ml/secといったん悪化し
たが、最終的に術後三ヶ月では16.3±6ml/secと改善
した。一方、Ho : YAGレーザー群では、術前8.7±6ml/
sec、術後1週(3〜10日後)16.6±6.4ml/sec、術後3ヶ
月19.4±1.3ml/secと術直後より著明な改善が見られ
た。Nd : YAGレーザー群の術前・術後3ヶ月、Ho : YAG
レーザー群の術前、術後1週(3〜10日後)の測定値に
は、いずれも有意の差があった(P<0.05)。また、術1週
後のNd : YAGレーザー群とHo : YAGレーザー群との測
定値の間にも有意差が認められた(P<0.001、図5)。
  
 
 
 
図4
図5

考察
 前立腺肥大症は、前立腺の尿道周囲腺が加齢とともに腫大し、尿道を圧迫するため、排尿障害を引き起こ
すにいたった病態をいう。前立腺肥大症の治療としては、薬物療法が第一選択である。しかし、薬物療法が奏
効しない場合には、手術療法が必要となる。手術療法としては、近年開腹手術に変わって、高周波電流を用
いる内視鏡的前立腺切除術が広く普及している。しかし、この方法では、高周波電流を用いる都合上、灌流
液に電解質を調合することができない。そのため、血中Na濃度の低下によるTUR症候群の発生が問題となっ
ており、重度の合併症を有する患者には施行できないという欠点があった。
 このような隘路を解決する目的で、レーザー照射による前立腺手術が試みはじめられている。しかし、一般
に用いられている連続波Nd : YAGレーザーは、レーザーの波長が1.06μmと比較的短いため、組織(水中)で
の減衰が少なく組織に深くエネルギーが及んでしまうこと、さらに術中に組織が蒸散し欠損した部分と術後日
時を経て壊死脱落する部分とのギャップが大きいため、前立腺被膜の穿孔などの危険があった。また、照射
部の変成した腺種組織が術後に腫張して、一過性の尿閉状態を来すことも問題点として指摘されている。そ
こで、私たちは、衝撃波による切開さようと、熱左葉による凝固作用とを併せ持つ、パルス波Ho : YAGレーザ
ーを応用することを考えた。
 また、前立腺の手術においてはファイバーと直交する方向にレーザービームを偏向させる必要があり、一般
に側射ファイバーが用いられている。側射ファイバーの形態としては金を蒸着した金属ミラーで偏向させるも
の、プリズムを用いて偏向させるものが一般に用いられている。しかし、前者では耐久性に問題があり、後者
ではレーザービームの照射方向がわかりにくいという欠点があった。そこで、本研究では、耐久性が高く、さら
に照準のあわせやすい側射ファイバーを、新たに開発した。このファイバーでは、照射方向の確認が容易で、
照射までの準備期間の大幅な短縮が行えた。また、石英カプセルが融着されているので、Nd : YAGレーザー
照射時の炭化した組織の付着が少なく、かつ付着しても簡単に取り去ることが可能であった。このファイバー
は、偏光法としてミラーやプリズムではなく、端面での全反射を利用しているので、Ho : YAGレーザーのおお
きなpeak powerに対しても、耐久性は十分なものであった。
 さらに、前立腺内の血流の状態を観察し、これらの血管を計画的に凝固・閉塞させ、治療の安全性を高める
ため、超音波ビームと直交した血流もすえることのできる超音波カラードプラエナジー法(パワードプラ法)を術
前に施行して、前立腺内の血流を予め把握した後にレーザー照射を行ったため、出血もほとんどみられなかっ
た。
 治療結果としては、3ヶ月後の最終成績で見ればNd : YAGレーザー群もHo : YAGレーザー群もほぼ同等の
成績で、いずれも満足の行くものであった。しかし、術直後の排尿状態の改善度は、Ho : YAGレーザー群の
方がはるかに良好な成績を示していた。したがって、カテーテルの抜去後ゆるやかに効果が出てくるNd : YAG
レーザー群の患者に比べ、退院時にほぼ最大効果に近い排尿状態となっているHo : YAGレーザー群の患者
の満足度ははるかに高かった。

おわりに
 Ho : YAGレーザーを用いて、安全確実に前立腺肥大症の治療を行えることが確認できた。今後、さらに高効
率化を図るべく努力をしていきたいと考えている。
 


文献
 

1) 棚橋善克:尿管内走査式超音波映像法と前立腺内血流同時2断面映像法,.Innervision, 6 : 122-125, 
1991.

2) 棚橋善克:泌尿器科領域におけるカラードプラの応用・腎(腫瘤).泌尿器外科, 7 : 231-242, 1994.

3) 棚橋善克:腎泌尿器科疾患における超音波ドプラ法.Annual Review 腎臓1995(長沢俊彦・他編) PP.63-
71, 中外医学社, 東京, 1995.

4) 棚橋善克・他:Ho : YAGレーザーとカラードプラエナジー法を用いた安全・確実な前立腺肥大症治療システ
ムの開発.共済医法, 46 : 125-130, 1997.