■産婦人科学

最終更新日:1998年4月1日 


骨盤子官内膜症における
ホルミウム・ヤグ(Ho:YAG)レーザーを用いた吊り上げ式腹腔鏡下手術の経験

防衛医大産婦人科
永田一郎、古谷健一



近年医療用レーザーは、周辺機器の改良とともに各診療科において広く使用されている。しかし、 Nd:YAGレ
ーザーは組織深達度が高いこと、またCO2レーザーは切開蒸散に適していながら石英ファイバーの伝達が困
難な点によリ、どちら腹腔鏡下手術には十分適していなかった。最近、 C02レーザーの性質を有しながら石英
ファイパー誘導可能なHo:YAGレーザーが開発され、内視鏡手術への応用が期待されている。今回骨盤子官
内膜症(5例)にHo:YAGレーザーと Laparoliftを用いた腹腔鏡下手術を経験したので報告する。 Ho:YAGレー
ザー(波長:2.08μm)は誘導ファイパー(直径:0.35mm〉をファイパーガイドを通じて腹腔内へ誘導した。また
Laparoliftにより腹腔内の術野の確保と洗浄が十分に実施できた。子官内膜症病巣の摘出では、切開の場
合と止血や蒸散の場合とを比較した結果、組織切開は有効ながら、むしろ組織剥離・止血や病巣の焼灼に有
効であった。またやや過剰な照射でも、切開が必要以上に深部に達しなかった。これは待性として、連続照
射でもインパルス状の照射のためであると思われた。以上のことから、 Ho:YAGレーザーは吊り上げ式腹腔
鏡下手術において、組織の剥離操作や止血燕散に有効かつ安全性が高いと思われた。



 ■文献■


婦人科子宮膣部円錐切除術における
各種レーザーメスの有用性の比較 
札幌社会保険総合病院婦人科、外
科*
西脇邦彦・渡辺まり子・片山英人、
佐野文男* 



日レ医誌(JJSLSM) 第20巻第3号(1999) 

婦人科子宮膣部円錐切除術における各種レーザーメスの有用性の比較 

札幌社会保険総合病院婦人科、外科*
西脇邦彦・渡辺まり子・片山英人、佐野文男* 

〈目的〉
 近年の子宮癌検診の普及および診断技術の向上により、子宮頚部早期悪性病変の発見頻度は、増加傾向
を示している。また、女性の晩婚化にも関連して妊孕能温存を考慮しなければならない症例も、増加傾向が認
められている。このような症例に対し、適切な術式選択のために診断目的で、また、上皮内癌異化が想定され
る症例に対しては、診断に加え、治療的意味で子宮膣部円錐切除術が行われるようになってきた。これまで
に当科で使用してきた各種レーザーメスについて、婦人科の立場から、その有用性を検討した。 

〈対象と方法〉
 当科で経験した子宮頚部早期悪性病変例に対し、最近用いているホルミウム・ヤグレーザーとそれ以前に
使用経験のある各種レーザー、およびハーモニック・スカルペルとの有用性の比較検討を行った。 

〈結果〉
 ホルミウム・ヤグレーザーによる子宮膣部円錐切除術例では、他の方法より、摘出病理標本での熱変性の
範囲と程度が軽度であり、術後の創面の回復が、早い印象を受けた。 

〈結語〉
 ホルミウム・ヤグレーザーは最近、各科領域で、その有用性が認められているが、婦人科における子宮膣部
円錐切除術においても、大いに有用と考えられた。