日レ医誌(JJSLSM)第21巻第3号(2000)

スポーツ医学における疼痛緩和を目的としたレーザー治療


日本大学医学部附属駿河台病院整形外科、日本大学医学部附属板橋病院整形外科
布袋屋 浩、斎藤 明義、加藤 有紀、元島 静香、吉松 俊紀、阿部 健男、久保村 達也、龍 順之助
 
【目的】当科ではスポーツ障害による疼痛緩和を目的に外来では半導体レーザーを用いた低反応レベルレー
ザー治療LLLTを、手術的治療では高反応レベルレーザー治療HLLTとしてHo:YAGレーザーを用いた鏡視下
手術を施行している。今回はそれらレーザー治療法の疼痛緩和効果について検討した。
【対象および方法】 LLLTは、慢性疼痛を主訴とするスポーツ障害500例に対し、出力150mWおよび1000mW、
波長830mmのGaAlAs半導体レーザーを使用し局所照射および経絡照射療法を施行した。HLLTは、スポーツ
障害に基づく外傷性慢性滑膜炎や変形性関節症の膝32例、足関節4例に対し、鏡視下Ho:YAGレーザー治療
を施行した。これらの症例に対し、pain relief score (PRS)を用いた主観的評価および臨床症状、JOA score
等について検討した。
【結果】 LLLTは鵞足炎やアキレス腱周囲炎など、比較的浅層で滑液包炎や腱鞘炎を伴った疼痛に対して特
に有効であった。一方、肩インピンジメント症候群や足根洞炎など、複合的な病態から生じる疼痛や、障害部
位が比較的深層にある場合、気質的変化の強い症例に対しては著明な効果が得られなかった。HLLTでは、
疼痛緩和の即時効果としてPRS平均3点であった。また術後1年経過時でもPRS4点で、満足する結果が得ら
れた。
【考察および結語】 スポーツ選手は治療方法やその期間に制約が多いため、その疼痛緩和を目的としたレー
ザー治療は、LLLT、HTTLともに、適応症例を選べば非常に有用性の高い治療法である。