6. 側射ファイバーの開発
棚橋善克(棚橋よしかつ+泌尿器科院長)
上記のファイバーの導光系としては石英ファイバーが用いられている。前立腺の手術においてはファイバーと直交する方向にレーザービームを偏向させる必要があり、Nd : YAGレーザーによる治療では側射ファイバーが用いられている。しかし、Ho : YAGレーザーは、Nd : YAGレーザーに比べpeak powerが大きいので、ミラーあるいはプリズムを用いたNd : YAGレーザーの側射ファイバーでは、耐久性に問題がある。また、これらの側射ファイバーでは、レーザーの側射方向の同定が難しく、照射方向の決定のために費やす時間が手術時間のかなりの部分を占めていた。そこで、これらの欠点を補うため、耐久性が高く、さらに照準のあわせやすい側射ファイバーを開発した。
- 1. 開発した側射ファイバーは、石英ファイバー先端部を約45°にカットし、この部分を石英カプセルで覆い、このカプセル内に窒素ガスを充填した構造とした。レーザー光は、45°にカットされた端面で全反射して、約85°偏光される(図3a)。なお、石英ファイバーのcore径は600μm、被膜を含めた外径は1.4mmで、先端のカプセルの外径は2.0mmである。
- 2. レーザーの照射方向はガイド光により確認できることになってはいるが、実際の内視鏡鏡下の使用では、尿道粘膜の状態(発赤、浮腫)によってはガイド光が見えにくいことがしばしばあり、照射方向の確認のために多大な時間を消費する。そこで、このファイバーには、先端に3本の線状のマーカーを付け、照射方向の確認を容易とし手術時間を短縮することをもくろんだ。レーザーの照射方向とマーカーの色との関係は図3bのようになっている。すなわち、内視鏡的に黄色のラインが見えたらレーザーの照射方向は6時方向、赤色のラインが見えたら9時方向、青色のラインが見えたら3時方向にレーザービームが出ていることになる。
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