日レ医誌(JJSLSM) 第20巻第3号(1999) 

外来レーザー手術症例の検討
 
防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座
田部哲也、中之坊学、松永毅、小倉雅実、北原哲 


<目的>
 耳鼻咽喉科領域のレーザー手術は、CO2、Nd:YAGにはじまり、最近はKTP、高出力半導体、Ho:YAGも
使用されている。近年日帰り手術が注目されているが、当科では1988年よりレーザー外来を設けて外来手術
を行っており、その有用性について考察する。 

<対象と方法>
 1998.12までの間に実施した計1,099件の手術症例を対象とし、対象疾患、麻酔法、手術法、レーザーの機
種、治療成績、合併症等について検討した。 

<結果>
 対象疾患は、レーザーによる病巣の切除、蒸散あるいは凝固で治癒が期待できるものであり、部位別では
鼻副鼻腔905件、口腔122件、咽頭44件、喉頭13件、気管等15件と多岐にわたっていた。麻酔は、4%リドカ
イン表面麻酔and/or0.5%リドカイン局注による局所麻酔で実施し、咽頭の一部の症例で麻酔の効果が不充分
であった他特に問題はなかった。レーザー光の導光は、ハンドピースあるいは撓性内視鏡の鉗子孔を通して
行い、照射出力は通常5〜10Wの範囲で必要かつ十分であった。レーザーは1991年まではCO2がほとん
ど(一部Nd:YAG)で、その後はKTPが主体(一部CO2,Ho:YAG)であった。喉頭気管狭窄に対する外来手
術には限界があったが、その他の疾患については有用であった。術後合併症は、花副鼻腔や咽頭の手術に
おいて軽微な術後出血を少数認めた程度で、重篤なものは全くなかった。術後の創部痛も軽微でありほとん
どの症例で鎮痛剤は不要であった。 

<結語>
 耳鼻咽喉科領域の外来手術にレーザーは極めて有用であり、今後も新しいレーザー及び周辺機器の開発
により、一層の臨床応用が期待される。