Ho:YAGレーザーは2.1μmの波長を有する不可視光である。レーザー光線は可曲性のケーブルを通じて0度
の角度のハンドピースによって照射される。 Ho:YAGレーザー光線の軟部組織における凝固の深達度は400
μm、切開では200μmである。今回の鼻内の骨組織の蒸散は主として1.0J、8パルス/秒の設定にて使用し
た。
従来のレーザーの鼻科領域での使用における欠点として、 C02レーザーは水や血液に吸収されやすく止血
効果に難があり、また骨蒸散能に乏しい。 Nd:YAGレーザーはその深達度が一定ではなく骨蒸散能も乏し
い。また接触型であるため軟部組織と粘着しやすい。 KTP/532レーザーはC02レーザーよりも凝固能に優
れ、 Nd:YAGレーザーよりも切開能に優れている。しかしながら、緑の可視光のためヘモグロピンにより吸収
され出血巣への使用に制限が生じ、眼球保護マスクを使用するので視界が悪くなる。また、骨との反応性が
乏しい。その反面、 Ho:YAGレーザーは眼球の保護が不用であり、骨との反応性に富んでおり、止血、凝固
能も優れている。また、晩発性の組織傷害も少ない。
症例 左側術後性上顎性嚢腫、64歳、男性
約40年前に両側のCaldwell_Luc手術を施行した。数年前より左側の頬部痛が時々生じ、軽度の頬部腫脹を
認めた。固有鼻腔との境昇(下鼻道外側壁)は厚い骨組織によって隔離されていた。
全身麻酔下にて手術を施行した。下鼻甲介の前部及び中部をHo:YAGレーザーにて切開、蒸散し良好な視
野を得た。次に下鼻甲介外側壁もHo:YAGレーザーにて照射し、軟部及び骨組織を蒸散し嚢腫内に到達し
た。嚢腫内には極めて粘稠な貯留液を認めた。さらに、開放口をレーザーにて拡大し十分な交通路を碗認し、
手術を終了した。全操作中、出血ほほとんど認めなかった。
|