日レ医誌(JJSLSM)第20巻第3号(1999) 

ホルミウムヤグレーザーによる下咽頭血管腫の治療例
 
日本大学病院耳鼻咽喉科学教室
茂木立学、木田亮紀、亀谷隆一、鯵坂 涼、島崎奈保子、牧山 清、久松健一 



<目的>
 下咽頭血管腫は稀な疾患であり、その治療法にはKTPレーザーが有効とされている。我々は下咽頭血管腫
に対するホルミウムヤグレーザーの有効性を検討した。 

<対象と方法>
 症例は63歳女性。主訴は咽頭違和感。約9ヶ月前より咽頭異常感を自覚し、近医耳鼻咽喉科で下咽頭腫瘤
を指摘され、1998年10月29日に精査加療目的で、駿河台日本大学病院耳鼻咽喉科を受診した。喉頭ファイ
バースコープで左梨状陥凹に表面平滑、暗赤色、嚥下運動にて可能性のある腫瘤が認められた。MRIT1強
調画像で、左梨状陥凹に境界明瞭で筋組織と等信号、T2強調画像では不均一な高信号、T1ガドリニウム造
影では腫瘤に一致して増強作用が認められた。以上より下咽頭血管腫と診断した。1999年2月2日に全身麻
酔下経口挿管により、直達喉頭鏡を用いてレーザー手術を施行した。レーザー装置はホルミウムヤグレーザ
ーを使用した。 

<結果>
 ホルミウムヤグレーザーを用いて5Wの出力にて腫瘤周囲組織を蒸散し、腫瘤を一塊とし摘出した。術後喉
頭の浮腫を認めなかった。病理検査は海面状血管腫であった。術後106病日現在、血管腫の再発を認めな
い。 

<結語>
 下咽頭血管腫の治療法には外切開による腫瘍摘出術、凍結手術、硬化療法、放射線療法、レーザー手術
などが報告されている。レーザー手術は出血が少なく、気管切開を必要とせず治療を行えることから、患者に
対する手術侵襲が少ない治療法である。一般に血管腫に対してKTPレーザーによる切開又は蒸散が用いら
れている。KTPレーザーはその特性から腫瘤にレーザーを照射するだけで腫瘤が消退し、容易にかつ短時間
に手術を行うことができる。耳鼻咽喉化領域ではその他ネオジウムヤグレーザー、CO2レーザーが用いられ
ている。今回我々はホルミウムヤグレーザーを用いて治療を行い、血管腫を完全に摘出し良好な経過を獲るこ
とができた。ホルミウムヤグレーザーも血管腫に対して有効なレーザーであると考えられた。